このコースでは、ものづくりの科学に興味・関心のある生徒を募集します。
高校までに勉強する理科・数学は我々の社会をよりよくするために様々に応用されています。本コースでは、(1)物理・化学・数学が「より良い社会」を構築するためにどのように応用されているのか、(2)現代における技術やものづくりを支えている科学、についての基礎的な講座を開講します。 また、QFCリサーチでは、最先端装置を皆さん自らが実際に駆使してもらい、我々科学者が日々格闘している「研究」の一端に失敗も成功も含めて体感してもらいます。
凝固及び結晶成長
金属系3Dプリンタでものづくり革命
コンピュータ制御したレーザ照射により金属粉末を急速に溶融・凝固させて新たな材料を作り、製造中で生じてしまう欠陥を解析して欠陥を無くす方法を考案し、3Dプリンタと急速凝固プロセスの可能性を探ります。
凝固組織の形成過程を理解します。また、造形を通してデザイン力を学びます。一方、多くの失敗や成功を通して、新たな実験にチャレンジする意欲を培います。国内外の学会発表ができればよいと考えています。
構造材料工学
鉄を鍛えるナノテクノロジー ~「窒素」を利用した新合金開発~
窒素(N)は大気の主な構成元素でありN2分子として存在するが、それを金属材料中に原子状態で分散させることで材料の強度を著しく増大させることが可能である。そのため、近年では窒素を含有する鉄鋼材料が、高耐食性材料、生体用・医療用材料、耐水素環境用材料などとして注目されている。しかし、実用化されている材料においては利用されている窒素の濃度は高々0.3質量%程度にすぎない。本研究では、高Cr鋼やCo合金に対して固相窒素吸収法という熱処理を用いて窒素を添加し、従来得られたことのない1.0質量%以上の超高水準レベルまで濃度を高めた高窒素合金の創製を試みる。それに加えて、ナノサイズの窒化物粒子を析出させる処理によりさらに強度を高める処理も行う。そして得られた材料の強度特性を引張試験により評価し、鉄鋼材料における窒素の役割を理解する。
新合金の設計・製造を通してものづくりの重要性と可能性について理解する。
反応制御学、高温冶金物理化学、マイクロ波工学、金属製錬工学
2050年のカーボンニュートラルメタルを目指して ~マイクロ波×水素~
鉱鉱石などの地下資源から金属を造り出す工程のことを“金属製錬”と言います。従来この金属製錬では石炭や天然ガスといった化石燃料が、反応を進行させるための熱エネルギー源として用いられてきました。化石燃料は使用する分だけ二酸化炭素などの温室効果ガスを排出してしまうため、その使用量をゼロすることが2050年カーボンニュートラル社会の実現向けた我々の使命です。本テーマでは、従来とは異なる加熱方法である“マイクロ波”と新しいグリーンエネルギーである”水素”に注目しています。これらの特徴を有効に活用することで、SDGsに配慮したカーボンニュートラルメタルの製造技術開発に取り組みます。
マイクロ波による加熱方法は、一般的な加熱方法と何が異なるのか?その特徴を学びます。さらに、水素を用いて鉱石から金属を製錬する工学研究実験を遂行し、その理解に必要な、化学反応工学の基礎を習得します。その成果は、担当教員と共著での国内学会発表や論文執筆によって世界に発信します。
電子顕微鏡、物質、材料、固体物性、結晶
研究開発における電子顕微鏡
原子レベルのミクロな姿を見せてくれる電子顕微鏡は、物理・化学の基礎研究から、物質・材料の研究開発、バイオ、地球科学、天文学、各種製造業にいたる様々なところに活躍の場があります。また、自動車や携帯電話のように、電子顕微鏡も常に進化し続けています。日本は電子顕微鏡を製造する国として主要な位置を占めており、若い世代へ電子顕微鏡の技術を受け継いでいくことも重要です。この講義では、電子顕微鏡による研究開発に興味をもつ学生を対象に、電子顕微の初歩から最先端までをわかりやすく紹介します。
興味ある研究分野で電子顕微鏡がどのように用いられているかを調べ、理解し、さらに電子顕微鏡の将来について考えることができる。
生体由来分子の工学的利用
蚕の繭が織りなすバイオ材料開発
近年、再生可能な資源から、新たな機能を示す材料を創り出す研究が注目されています。ここでは生物が紡ぎ出す生物資源の1つである蚕の繭を取り上げ、分子の視点からその特徴を理解し、その性質を活かしたバイオ材料の開発について学びます。
高校生を対象とした学会での成果発表を目指します。
有機材料の設計、生物に学ぶものづくりとプロセス開発
生物に学ぶものづくりとプロセス開発
生物が様々な活動を行って、複雑な生命活動を行っています。生物の機能にならって、バイオテクノロジーや新しいモノづくりに役立つ高分子材料、それを用いたプロセスの開発を行います。
生物の仕組みを真似して、タンパク質に強く分子認識する材料の開発を行います。有機合成、高分子合成を実際に行い、材料設計と評価を行い、成果を学会発表することを目指す。
金属、半導体などの新物質探索
原子を組み合わせて新しい材料をデザインする
世界中で使われている材料は、原子が規則正しく整列した「結晶構造」を持っています。それぞれの材料の性質は、その「結晶構造」と深い関わりを持っていて、大学ではさらに小さな「電子」が材料の性質をどのように決定しているかについて学びます。
高校では原子は物理、結晶構造は化学と別々に勉強しますが、このリサーチテーマではその両方を使って、新しい材料のデザイン方法について考えます。原子を組み立てて結晶構造を考案し、新しい材料をデザインすることの面白さを体験してもらいます。
設計通りの結晶構造ができたかどうかは、X線や電子線を用いた回折実験によって確かめることができます。面白そうなものを考えることができたら、実際に合成して目的のものができているか確かめてみましょう。
計算機シミュレーションと量子ビームを用いた新材料の探索・合成を体験する。
高分子科学
次世代型高分子複合材料
次世代モビリティの創成には、軽くて丈夫な材料が必要です。高分子と異種材料を複合化した材料の特性はその界面構造と関係していますが、わからないことばかりです。本テーマでは、先端装置を使用して、界面での高分子の振舞いを考え、軽くて丈夫な高分子複合材料の設計指針の提案を目指します。
プラスチックやゴムなどのマクロな材料を分子という視点で考えられるようになることを目指します。可能であれば、学会発表や共著論文の執筆にも挑戦します。
融体物理化学
交流電場で超高温のガラスをセンシングする 〜見えないを視えるに〜
私たちの身の回りにある金属、ガラス、半導体などといった無機材料は超高温の溶融プロセスを経て生産されています。また、原子力発電所から排出される使用済み核燃料や廃炉デブリなどの高レベル放射性廃棄物を溶融したガラスに封入する処理工程にでも、未溶解の放射性廃棄物やガラスに溶けきれず分離した固体の存在は、これら核のゴミの何世代にもわたる安全な保管を著しく妨げる原因となります。今回のインターンシップでは、交流電場を用いる電気インピーダンストモグラフィ法を高温で溶融したガラスに適用し、ガラス融体中に分散する固体のサイズ、分布および種類を4次元的に可視化する手法を開発します。ここで、インピーダンストモグラフィ法とは、キャパシタンスやインピーダンスなどの電気量を超高速で多次元的に計測し、3次元空間+時間の4次元で可視化する技術です。
交流電場を用いる電気インピーダンストモグラフィ法を高温で溶融したガラスに適用し、ガラス融体中に分散する固体のサイズ、分布および種類を4次元的に可視化する手法を開発する。
凝固・結晶成長
10億倍の光を利用した透視術
可視光では見ることのできない融けた物質の内部を、”放射光”を用いてリアルタイムに観察し、物質の融解・凝固現象の謎に迫ります。金属3Dプリンタ等で行われているレーザー溶融法における合金粉末の急速溶解・急速凝固現象の素過程(どのように融け、どのように固まるのか)を、大型放射光施設SPring-8で行うリアルタイム観察の結果を基に明らかにします。
身の回りにある金属材料が液体から固体へと変化する際の「多様性」を体感・理解したうえで、最先端技術である金属3Dプリンタにて起こっている現象を解き明かすこと。その過程において、研究の背景・意義を説明でき、正しく試料や観察結果を処理・評価でき、得られた結果について自分で考える力を持てるようになること。
結晶塑性、耐熱金属材料
超音波振動減衰による可動転位の検出 ~金属の音色と余韻から原子の動きを測る~
金属やセラミックは原子が整然と並んだ結晶でできています。結晶内の一部には原子の並びが乱れてトンネル状の空洞になった「転位」という構造が存在することがあり、この転位が移動しやすい物質ほど変形しやすいことがわかっています。
止まっている転位なら電子顕微鏡で観察することもできますが、動き回っている転位の特徴を捉えるにはどうすれば良いでしょうか?本テーマでは超音波を使って転位を動かし、超音波減衰挙動の測定から転位の動的な特徴を明らかにすること目指します。
目で直接見るのが困難なナノスケールでの動的現象を明らかにするために「具体的に何をどうすれば解明に近づけるか?」を考え、発想力に磨きをかける。そして、原理の解明に向けた糸口を掴む。
化学熱力学、電気化学、非鉄金属製錬
レアメタルとそのリサイクル ~現代の錬金術師の役割~
皆さんが使っているスマホなどのハイテク製品には、多種多様なレアメタルが使用されています。これらのレアメタルがどのようにして作られているのかと、都市鉱山とも呼ばれる使用済み製品からのリサイクルの意義・重要性を紹介します。
構造材料工学
鉄を鍛えるナノテクノロジー ~「窒素」を利用した新合金開発~
窒素(N)は大気の主な構成元素でありN2分子として存在するが、それを金属材料中に原子状態で分散させることで材料の強度を著しく増大させることが可能である。そのため、近年では窒素を含有する鉄鋼材料が、高耐食性材料、生体用・医療用材料、耐水素環境用材料などとして注目されている。しかし、実用化されている材料においては利用されている窒素の濃度は高々0.3質量%程度にすぎない。本研究では、高Cr鋼やCo合金に対して固相窒素吸収法という熱処理を用いて窒素を添加し、従来得られたことのない1.0質量%以上の超高水準レベルまで濃度を高めた高窒素合金の創製を試みる。それに加えて、ナノサイズの窒化物粒子を析出させる処理によりさらに強度を高める処理も行う。そして得られた材料の強度特性を引張試験により評価し、鉄鋼材料における窒素の役割を理解する。
新合金の設計・製造を通してものづくりの重要性と可能性について理解する。
分子科学・光化学・レーザー計測
光化学 - 光エネルギーを化学の力で活用する
光エネルギーを有効活用することは21世紀の人類の使命の一つです。私たちは普段、様々な光に囲まれて生活していますが、いざ活用してくださいと言われても何をどう考えてよいかわからないのではないでしょうか。最先端のレーザー装置も使いながら、光がどのように身近な化学と関わっているか調べ、未来を拓く“光化学”の可能性を体験してみましょう!
身の回りの光が関わる技術や現象の原理を学び、興味を持った未解明現象を絡めたテーマで研究を行います。例えば有機ELなどの最先端のテクノロジーでも利用される分子の発光現象の謎の追究や、光があって初めて生じる反応の解析の一部を体験します。得られた成果は学会発表や国際論文への投稿という形で世界に発信します。
製鉄
製鉄のプロセス解析
鉄は現代においても産業の基礎を支える重要な素材です。そのため世界的に製造量が多く、その製造には膨大なエネルギーが消費されています。この製造プロセスをどれだけサステナブルなものに近づけることができるかについて解析を行っています。
水素製鉄のような二酸化炭素を排出しない製鉄を実現するために、そのプロセスで起きる現象を明らかにする。